先達て、第4回まで書いた、「僕のパソコン80年代記」だけれども、PC-8801mkIISRに関しては、そこで一旦一区切りとしておこう、と思う。
本当は、『ザナドゥ』や『ソーサリアン』など、日本ファルコムの他のゲームや、僕が如何にPC-88のFM音源と格闘したかwなどなど、書きたいことはまだ色々とあるけれども、次に入手したマシンの方へ話を移したい。
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しかし、PC-88の内蔵FM音源は、僕にとって実に、音楽とシンセサイザーの勉強の基(もとい)となるものであった。
これを鳴らすプログラムを作るためには、MML(Music Macro Language)という、アルファベットや数字等を用いて記譜するための言語を覚えなくてはならなかった。
そして、その言語を覚えるためには、基本的な楽典の知識が必要だったので、そこで僕は音楽を(独学で)勉強することになったのである。それと同時に、シンセサイザーの構造や発声の仕組みも、別途自分で学んでいった。
(MMLの一例。前掲『FM音楽館』より)
さらに、それらに加えて、シンセサイザーの操作や演奏に必要な、鍵盤の鍛錬である。僕の通っていた県立高校は、共学化したばかりの(当時でまだ10年目だった)元女子校だったので、そのせいかどうなのか、ピアノがたくさん置いてあったのだ。
具体的に言うと、アップライトピアノを置いた四畳半くらいの小さな防音室が、ワンフロアにズラリと並んでいるような校舎があったのである。そこでは、ピアノを弾き放題だw 僕は日々、その校舎に足を運んで、鍵盤のこれまた独習に励んだのであった。
そして、家には、Rolandの旧いキーボードがあった。鍵盤が接触不良を起こしていて鳴らないからということで、母が何処かから貰って来たのだ。
僕がそのキーボード本体を分解して開けてみると、内部に埃が山のように溜まっていた。そこで、分解掃除をしたところ、全く問題なく使えるようになったのである。家では、専らそのキーボードを使って練習したのだ。
(僕が高校生の時に使っていた、Rolandのキーボードは、これ。機種名などはもう失念していたけれども、ネット検索したら、すぐに分かった…。出典:「Reverb」)
そういった、やや遅れてやって来たような(苦笑)、充実した音楽的学習環境によって、僕は音楽の基礎を習得することになったのだけれども、それが結果的に、数年後にゲーム会社へ就職し、サウンドクリエイターの職に就くことへと繋がっていったのだ、と理解している。
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僕の高校時代のパソコン遍歴は、そういった感じで過ぎていった。それは常に、音楽やゲームと一体だったのである。その傾向は、その後もまだまだ続くのだけれども、お供として使用するマシンが変わっていったのだ。
僕は都内の大学に合格し、一人暮らしを始めるために上京することになった。それまで僕が使っていた、かのPC-8801mkIISRは、下宿先へ持って行かないことになったのである。
僕には弟がいる。弟も、僕に引けを取らないどころか、僕以上のパソコン好きなのだ。その弟のために、僕はPC-88を実家に置いていくことにした。
まあ、ちょっと大げさに言えば、置いていくことを断腸の想いで決断したのだろう、と思う。でも、僕には既に、次の目論見があったのだ。大学合格後に近所の工場で1ヶ月アルバイトをしたお金を使って、別のパソコンを新たに買うことにしたのである。
それは、前の年に発売されたばかりの、MSXパソコンの最新版、MSX2+だった。SONYのHB-F1XDJという機種である。定価は、69,800円。
(出典:「Generation MSX」)
このMSX2+は、PC-8801mkIISRと比べると、かなり性能は低いけれども、ゲームソフトのラインアップが比較的充実していて、尚且つFM音源内蔵だったのである。
つまり、グレードは落ちるが、方向性はPC-8801mkIISRと大体同じ。僕はそう解釈していた。まあ、大学入学前の学生が少しバイトして買えるパソコンといえば、当時はこのくらいしかなかった、というのもあるw
そこで、僕はこのMSX2+パソコンを使って、再びゲームとFM音源の道を邁進しようとしたのだった…。(つづく)
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