前回は、「時の前置詞」についてお話しする前に、その取っ掛かりとして、「場所の前置詞」について書いた。
広さがあると感じられる場所に対してはinを使い、点のように感じられる場所に対してはatを使う、という区別がある、ということなのだ。そもそもinには、「~の中に」という意味がある。これ自体が、やはり広さというものを意識しているのだ。
この、inとatの区別を、「時の前置詞」でも用いる。そして、その中間にonを据えている、と考えれば解りやすい。つまり、あえて不等号で表せば、「at < on < in」という関係が成り立つ。右から大中小である。
さて、時間の流れの中でいちばん大きな単位は、年だろうと思う。世紀(100年)やミレニアム(1000年)などは、年の単なる集合である。だから、年が最大単位と考えておく。
よって、上に書いた「at < on < in」の中で、年はinと共に使うことになる。inは、大中小の大にあたるからだ。だから、「1999年に…」というときには、”… in 1999″と書く。
季節や月にも、ある程度の広さ(または大きさ)があるという具合に考えて、同様にinを用いる。その辺りの感覚は、カレンダーを見ると理解できると思う。ひとつの季節は、月めくりのカレンダーで、3枚分である。あと、1ヶ月の中には、日にちが30前後もある。だから、これらにもinを使うのだ。
また、板書がわりの、僕の手書きメモを貼っておきたい。これまた、雑でゴメンナサイ…。
実際の授業では、こうして、前回の日本地図のようなものや、下のカレンダーのような図を、サッと黒板に書きながら、ドンドン喋っていくのである。なかなかに、忙しいw
次に、時間の流れの中で、最小単位は何かというと、時分秒であろう。つまり、時刻だ。時刻は、カレンダーのような大きな視点で時を眺めると、殆ど点のようなものである。ピンポイントなのだ。
前回お話ししたように、ピンポイントのものには、atを用いる。だから、例えば「…11時に」というときには、”… at eleven (o’clock)”となる。(ちなみに、今の中学校英語では、このo’clockは、殆ど教えていない。いつも省略して書くようになっている)
そんなわけで、年や季節や月には、前置詞はinを用いる。時刻には、atだ。では、その中間にある、日付や曜日はどうするか?
ここで、上に述べたonを用いるのだ。日付や曜日というものは、カレンダー上では、月の中に含まれている。だから、月よりは小さい。でも、時刻ほどにはピンポイントでもない。そんな、間をとったような立ち位置の存在だ。
よって、inもatも使わずに、onという別の前置詞を使うことにしたのだろう、と思う。(でも、何故onが選ばれたのかは、僕はよく分からないw)
例えば、「…7月5日に」という場合には、”… on July 5th”とかいう具合に書く。(他に、”… on the 5th of July”など、日付そのものには幾つか表記の仕方がある。でも何であれ、前置詞はonである)
曜日も、「日曜日に…」は、”… on Sunday”だ。ちなみに、「日曜日の朝(午前中)に…」というときにも、”… on Sunday morning”と、onを使うのである。単純に、「朝に(または、午前中に)…」というときには、”… in the morning”のように、inを使うのにもかかわらず。
この辺りの、前置詞の入れ替えの感覚というのが、実はとても興味深い。僕の大学のときの先生は、こういったことを指して、「前置詞だけで本が一冊書ける」と仰ったのであろう。これが、英語に対する興味が尽きない所以である。
さて、字数もいっぱいになってきた…。まだまだ、何だか書き足りない気がするけれども、前置詞に関しては、この辺でお開きとしておきます…。
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トップの写真には、バウアーのギリシア語英語辞典を撮ってみた。ギリシア語などを眺めていると、英語は実に簡素に出来上がっている言語だなあ…と僕なんかはシミジミしてしまう。ヨーロッパの言語は、大抵が英語より遥かに構造が複雑だ。
『A Greek-English Lexicon of the New Testament and Other Early Christian Literature』
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