坂本龍一の音楽インスタレーション、『設置音楽2』へ、先週の木曜日に行ってきた。5月にワタリウム美術館で開催された、『設置音楽』の謂わば、これは続編であろう。(そちらについての投稿は、こちらからどうぞ)
今回は、西新宿のNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)が会場である。東京オペラシティタワーの4階だ。僕は、先達ての投稿で書いたように、この日の午前中、東京都庁の45階展望台に行ってきた。そこから建物と方角を確認しておいたのである。
(真ん中の高いビルが、東京オペラシティタワー。その手前のビルは、NTT東日本の本社。東京都庁の展望台から撮影)
開場時刻の午前11時ちょうどの到着を目指して向かったのだけれども、途中で写真を撮りながら歩いていたら、2~3分くらい過ぎてしまったのである。でも、平日ということもあって、混んでいるということはなかった。
ICCでは、『未来の再創造』という展示会も催されていた。これは坂本龍一と直接関連はない内容なのだけれども、先進的で芸術的なインスタレーションが多数展示されているので、併せて見学すると良いだろうと思う。
このときのお客さんの数は、両方の展示会あわせて、十数人程だった。『設置音楽2』の方が数名、『未来の再創造』の方が10人くらいである。かなりゆったりと見学できた。
(会場の外に掲示されていた、『設置音楽2』のポスター)
会場入り口のカウンターでチケットを買う。『設置音楽2』の入場料は500円である(『未来の再創造』は無料)。僕は、予め公式サイトから割引クーポンをプリントアウトして持って行ったので、400円だった。そのときカウンターで貰う配布物が、トップの写真に写っているものである。
さて、この会場内では、もうひとつ、『設置音楽コンテスト』の入賞作品を聴くことが出来る場所もある。これが、やや分かりにくいところにあるのだ。
下の写真に写っている地図を見て欲しい。黄緑のクリップを置いた場所が、それである。受付の左側(地図では上)の方に、奥へと入っていく通路がある。そこを入ったすぐ左手にミニシアターがある。その中で聴くことが出来るのだ。
なお、上の地図で「ICC4階 特設会場」と書いてあるところ(クリップの右側)は、実際は「Staff Only」と表示されている場所なので、ご注意。その手前の、数段の階段を上って入るシアターの方で『設置音楽コンテスト』の音楽を聴くことが出来る。
何故、この場所を強調するのかというと、ここへ行った皆さんに是非とも、これらの入賞作品も聴いてきて頂きたいからである。坂本龍一の最新作『async』を聴き慣れた方ならば、ニヤリとすること請け合いの傑作揃いなのだ。
さてさて、『設置音楽2』の展示会場に行くには、階段を上がって5階へ行くことになる。こちらについては、下の写真のように、壁に表記がある。矢印の方向へ、どうぞ。
階段を上がって右側を見ると、この展示会のタイトル「IS YOUR TIME」が壁に大きく書かれているのが分かる。その手前の柱には、坂本龍一キョージュからのメッセージが印字されているので、忘れずに読んでおこう。
ちなみに、これ、壁に直接印刷したように見えたのだけれども、どうやったのだろう?接近して、まじまじと見てしまった…。確か、前回の『設置音楽』のとき、ワタリウム美術館の壁も、こうなっていたような気がする。
さて、『設置音楽2』は、真っ黒な入り口を入って行くのだけれども、その先は撮影禁止なので写真は無いのだ…。明かりをほぼ全て落とした広い空間内に、スピーカーが計14個、ぐるりと囲むように設置してある。モニターは10台。
モニターにはテレビの砂嵐のような映像が映し出され、スピーカーからは、係員のかた曰く「asyncの曲のサウンドを引き伸ばした音」が鳴らされている。
そして、いちばん奥には、ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto:CODA』にも登場した、大震災の津波を被ったピアノが置いてある。下の写真にもあるように、坂本龍一が現地で、このピアノに対面しているのだ。
ピアノの側面には、茶色い横の線が付いている。流されたときの水面の痕だ。会場内のピアノも、それはそのままだった。天板に埃が真っ白についているところや、切れたピアノ線があるところなども、敢えてそのままにしてある。
こうして、震災の爪痕を残して展示してあるというわけだ。暗い会場内でそのピアノを見ていると、胸に迫るものがある。しかも、このピアノには、自動で打鍵する装置(YAMAHAのロゴ入り)が載せられていて、世界中の過去の地震の履歴を音階に変換して演奏しているのだそうである(これも会場の係員のお話)。
また、この会場の片隅には、BRAUN社製の随分とレトロなラジオが、ホワイトノイズを出しながら置きっぱなしにしてあった。『async』から取り出した音と、ゆっくりと打ち鳴らされる震災ピアノの音階と、つけたままのラジオのノイズ。
これらの3種類のサウンドが渾然一体とした空間なのである。僕には、この場がとても心地よく感じられた。真っ暗なので、布団を敷いて寝てしまいたいくらい。それ程に、ずっといたかったのだけれども、この日の僕は行くところが幾つもある…。
ちなみに、前回の『設置音楽』のときと同様、この会場内のスピーカーは全て、ドイツのムジークエレクトロニクガイザイン社製だった。キョージュこだわりのメーカーなのである。本当に、これがお好きなのだなあ。僕も欲しい。とても高価なのだけれども…。
さて、やや後ろ髪を引かれながら、僕は『設置音楽2』の会場を後にした。次は、その隣の『未来の再創造』を観るのだ。こちらはこちらで、随分と色々なものがありそうである。これまた少しワクワクしながら足を運んだ。(次回に、つづく)
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ムジークエレクトロニクガイザインのスピーカー、Amazonにもありました。このモデルだけですが。このメーカーのスピーカーは、同軸型という、3ウェイそれぞれのユニットを同一線上に配置しているのが大きな特徴。モニタースピーカーの究極の理想である、「スピーカーの音がしない。楽器の音だけがする」というのですから、凄いもんです…。
「Musikelectronic Geithain RL906 ペア」
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