ショパンのピアノ協奏曲に、このような激烈なる格別な名盤があったとは…

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先達て、ブックオフで『新版 クラシックCDの名盤』という新書を購入した。110円だったので、他のCDや本を買うついでに手に取ったのである。

僕は、この手の名曲名盤を紹介する書籍が好きで、何冊も持っている。時折、以外な情報を得られることがあるからだ。果たせるかな、この本もそうであった。

ショパンのピアノ協奏曲の項を見ると、まず第一にマルタ・アルゲリッチ(シャルル・デュトワ指揮)のCDが紹介されていた。まあ、そうであろう。僕も、そのCDを愛蔵している。(上の写真の右下に写っているCD)
その左隣のページには、クリスティアン・ツィマーマンだ。ああ、これも僕は勿論持っているぞ、と思い本文を読み進めるとちょっと違う。ツィマーマンが弾き振りをしていると書いてある。しかも、若いときに収録したCD(=僕が持っているCD。上の写真の右上)よりも随分と凄いようだ。

どうやらアルゲリッチさえも霞んでしまう程らしいので、気になりYouTubeで探して聴いてみた。これが、何とまあ確かに素晴らしい演奏だったのである。(その後、図書館でCDと楽譜を借りた。それがトップの写真)

第1番の第1楽章、アウフタクトの第一音からいきなり、他のオケの演奏とは全く違う響き。唸るようなビブラートが掛かっているのだ。このような演奏は、初めて聴いたぞ…。

曲の間中、弦は咽び泣くように鳴り続け、管は咆哮し、ピアノは叫ぶ。オーケストレーションを少し変更した部分があるようにも聞こえる。曲全体がショパンの慟哭だ。まるで、ツィマーマンにショパンが憑依したかのようだ。もう、激烈なる別格の演奏である。

僕は、ショパンの音楽を聴くと、雨や風の風景がモノクロームで脳裏に浮かぶことが多い。しかし、このツィマーマンの弾き振りのピアノ協奏曲では、大きな落日の光景が目の前に迫って来る。
その燃えるような夕焼けを、老境に達したショパンが頬杖を突きながら眺めているのである。ご存知の通り、ショパンは30代で夭折したので、これはあり得ない光景ではある。

多分、ツィマーマンの余りにも格別なる演奏が、僕に幻を見せるのだろうと思った。パッセージがひとつ終わるたびに訪れる静寂と残響もまた美しい。そんなシーンにまでも色がついている…。
もう彼此20年も前に録音されリリースされたCDだけれども、その当時の僕ではきっとこの演奏の真意や真髄が理解できなかっただろう。

だから、今になってこのCDを知って良かったのだと思う。きっかけは、ブックオフで買った一冊の本だ。いやあ面白い…。
この『新版 クラシックCDの名盤』の「ゴルドベルク変奏曲」の項には、作曲家の間宮芳生氏の言葉が紹介されている。

「曲には演奏の歴史が必要である」

…蓋し名言であろうと思う。

さて、ツィマーマンのこの演奏は、チャイコフスキーの「悲愴」で例えればテオドール・クルレンツィス指揮のそれに匹敵するような、歴史的とも言える名盤だと思う。いずれも余人を以って替え難い譜読みの深さに特徴があるのだ…。

その天才鬼才指揮者のテオドール・クルレンツィスだけれども、来年4月に再来日するというニュースが、きのう発表された。
勿論、手兵のオーケストラであるムジカエテルナと、前回(今年の2月)にも帯同したヴァイオリニスト、パトリシア・コパチンスカヤもまた一緒である。これは期待できそうだ、と言うよりも、しなければオカシイw

今年の来日時にはチャイコフスキーがメインのプログラムだったけれども、来年はベートーヴェンのようである。上のリンク先の情報によると、演奏される曲が第9の日と第7番の日があるようだ。
僕なら、もし行くとしたら、第7番の方を選ぶだろう。第2楽章の所謂「不滅のアレグレット」を聴くためだ。しかも、この日にはコパチンスカヤのヴァイオリン協奏曲も予定されている。

あとは、料金だなあ。これについては追加情報待ち。前回よりは高くなるのかも。まあ、ネームバリューが更に上がっているから、仕方がないところであろう…。どうか、仕事とぶつかりませんようにw

それにしても、クルレンツィスとムジカエテルナは、今年は新作のCDを出さないのだろうか?昨年も一昨年も、秋〜冬になるとリリースしていたものだ。今年はまだ音沙汰が何もない。はてさて、どうしたものか…。

……
この本は、旧版を9年ぶりに増補改訂したものなのだそうです。それが、2008年。それ以来、既に11年が経ちましたが、その間に上述のテオドール・クルレンツィスなどなど、名演奏家たちによる名盤が更に増えました。とても良く出来ているガイドブックなので、もし可能であれば二度(にたび)の改訂をお願いしたいところであります。

『新版 クラシックCDの名盤』
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