題名も作者も不明の妖精物語(英文)を翻案して、ショートショートにしてみたのだ…

対訳

僕は最近、「ショートショートガーデン」というサイトで、400字のショートショートをしたため発表し続けている。既に30作品以上が、そこに載せられている。

ここ一週間くらいは、少年が森の中で妖精に出会ったという話を書いている。まあ、よくある設定と言ってしまえばそれまでで、実はこれには英語で書かれた原案があるのだ。僕はその英文を目にしたことがある。
それは、長さにして1300字ほど、語数では約700wordsの分量である。謂わば、英語で書かれたショートショートといったところであろうか…。その英文と僕自身の私訳は、後ほど載せておきたいと思う。

さて、この英語ショートショートは、題名も作者も全くの不明だ。ネットで検索しても引っかかって来ないのである。僕はこの短い物語を何度も思い返すうちに、自分自身のイマジネーションが膨らむのを感じた。
そこで、日本語訳でも700字くらいの長さになる、このストーリーを大幅に加筆して翻案し、約2000字のショートショートに仕立てた。タイトルは『光の妖精』としておいた。それを「ショートショートガーデン」に、5回に分けて載せたのである。

是非とも、原案となった英文と拙訳もそちらに載せたく思ったけれども、「ショートショートガーデン」では、ひとつの投稿につき400字の制限がある関係上、これも5回に分けて載せるのは(読み手側にとっても)かえって煩雑になるように感じられた。

従って、このブログのスペースをお借りして、ここに一挙掲載致したく思います。また、「ショートショートガーデン」の僕のページに行かれたことのない向きにおかれては、是非ともこの機会に僕のショートショートにもお目通し下さいますよう…。

では、以下が『光の妖精』の原案となった英文です(作者および題名は不明。日本文は「白ねこのため息」による私訳)。

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One day in a forest a fairy helped a little boy whose name was Dick.
ある日、妖精は森の中でディックという名の小さな男の子を助けた。

Dick wanted to do something for the fairy and asked,
“Is there anything I can do for you?”
ディックは妖精のために何かしたいと思って尋ねた。
「僕があなたのために何かしてあげられることはありますか?」

The fairy answered, “I want something you have.”
その妖精は答えた。「君の持っているものが欲しいです」

“Well, then, I’ll give you my book. Please wait under that big tree.
I’ll be back soon,” said Dick.
「それでは、あなたに僕の本をあげます。あの大きな木の下で待っていて下さい。
すぐに戻って来ます」ディックは言った。

Then he went home to get his book.
そこで、彼は本を取りに家へ帰った。

But when he came home, his mother was very angry
because he was late for dinner. Then he forgot his promise.
しかし、彼が帰宅すると、夕食に遅れたので、彼のお母さんがとても怒った。
それから、彼は自分の約束を忘れた。

Forty years passed. Dick worked hard every day and became rich.
40年が経った。ディックは毎日一生懸命に働き、お金持ちになった。

One evening when he was driving home, he remembered his promise with the fairy.
ある晩、彼は家へと車を運転しているとき、妖精との約束を思い出した。

He quickly went to the forest with one of the books that he read when he was a child.
彼は、子供の頃に読んでいた本を一冊持って、すぐに森へ行った。

Everything was the same in the forest.
森の中では、何もかもが変わっていなかった。

The big tree was still there but Dick could not see anything under the tree.
大きな木は、まだそこにあった。しかし、ディックは木の下に何も見えなかった。

Then he heard, “Hello, Dick! I’m here.”
The fairy was still there!
そのとき、彼には聞こえた。「こんにちは、ディック。私は、ここにいます」
その妖精は、まだそこにいたのだ!

Tears ran down Dick’s face.
涙がディックの顔を流れて落ちた。

He said, “I’m so sorry. But how strange!
I can’t see you. Can you see me?”
彼は言った。「本当にごめんなさい。でも、何とおかしなことでしょう!
僕にはあなたが見えません。あなたには僕が見えますか?」

The fairy answered, “Yes, of course.
妖精は答えた。「ええ、もちろん。

Fairies never become old. You can’t see me because you are not a child now.
Did you bring your book for me?”
妖精は決して歳を取りません。今、あなたは子供ではないので、私が見えないのです。
私に本を持って来ましたか?」

“Yes, here it is.”
「はい、どうぞ」

The fairy took the book and said, “Thank you. I must go now. Good-bye.”
妖精はその本を取って言った。「ありがとう。私はもう行かなくては。さようなら」

Dick shouted, “Please wait! Please!”
ディックは叫んだ。「待って下さい!お願いです!」

But there was no answer. It became quiet again in the forest.
しかし、返事は何もなかった。森の中は再び静かになった。

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如何でしたか?僕のショートショート『光の妖精』が掲載されているページには、下のリンクからも行くことが出来ます。どうぞ宜しく…。

ショートショートガーデン 白ねこのため息

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さて、この原案となった妖精物語には、別の話題があります。
手塚治虫先生の数あるマンガの中に「雨ふり小僧」という作品があり、後年、約25分のアニメにもなりました。この作品のプロットが、何とこの英語の妖精物語とよく似ているのです。但し「雨ふり小僧」の方では、妖精ではなく座敷わらしのような小僧(頭から番傘を被っている)が登場し、少年から受け取るのは本ではなく黒いゴム長靴という具合に、だいぶ日本的な設定になっています。あと、お話にはギャグの要素が追加されており、それでも最後はじーんと泣かせるというところに流石、手塚先生の妙味を感じさせます。ご興味がありましたら、是非こちらの方も手に取ってみて下さい…。

『手塚治虫名作集 (2) 雨ふり小僧』 (集英社文庫(コミック版))
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