数ヶ月ぶりに実家の方へと列車の旅。あの作曲家とヴァイオリ二ストの演奏を楽しく聴いたのだ…

お出かけ

6月に入ってから、日曜日に実家のある地方へ行った。以前から予定していた、クラシック音楽の演奏会を聴くためであった。
作曲家でピアニストの加藤昌則さんとヴァイオリニストの奥村愛さんのジョイントコンサートだ。如何にも加藤さんらしい、音楽史を交えたレクチャーが目玉なのである。

そういえば、その前の晩もNHK-FMで加藤さんの番組を聴いた。そのテーマは、音楽の調性とピアノ曲。
例えば、変ト長調と嬰ヘ長調は実質的に同じキーなのだけれども、ショパンはそれぞれの調性で全く異なる曲調のピアノ曲(練習曲と前奏曲)を作ったとか云々。いつも興味深く楽しいお話をしてくれるのだ。

そして、日曜日には奥村さんの1738年製、イタリアのカミリア・カミリーというヴァイオリンを交えてトークと演奏が披露された。
加藤さんのソフトな音色のピアノと、繊細な調べを聴かせるヴァイオリンは相性がとても良い。本業は作曲と仰りつつも、大変に素晴らしいピアニストでもいらっしゃるのだ。

この辺りの風は、大都市部の雑多な空気とは異なり、実に清涼感があると感じられる。道を早足に歩いても汗をかかず、爽やかな気分になる。時折、周囲が田圃だらけの道で独り、マスクを手に深呼吸をしてみた。
トップの写真は、田植えを終えたばかりの水田の脇に群生する、キバナコスモスだろうか。そよ風にほんのりと揺れて咲いていた。そう言えば、以前も同じような場所で似た写真を撮ったことを思い出す。

上は、田んぼの向こうで小さな森に囲まれた一軒家。多分、小学生のときの同級生の家だと思う。でも、その子は中学へ上がる前に東京へ行ってしまい、それっきり会っていない。
事情があって、この家にそれまで預けられていたのだそうだ。病弱な子だったな。あれから約40年、元気にしているだろうか。ふと、そんなことを思った。名前は、早苗さんと言った。この時季にとても相応しい名であった…。

こちらは、歩いているときに見つけた、石像の群れである。石材店の跡地だったようで、幾つもの大きな石(と言うよりも岩)と共に打ち捨てられ、風雨に晒されている。
何処となく『千と千尋の神隠し』の一場面を思い起こさせた。赤い灯篭でも周囲に置いておけばバッチリだろうw 奥に控える林の深閑さと石像たちの醸す不気味さ(?)とが相まって、独特の雰囲気がちょっと面白いと感じられたのだった…。


さて、翌日。電車でうちに帰って来た。今回は往復とも、鈍行列車の旅だったのだ。大学生くらいのときには、特急に乗ってサーっと駆け抜けるようにして東京と実家を行ったり来たりするのが好きだったのだけれども、最近そんな移動にはもう魅力を感じなくなった。
ゆっくりした電車の中で、予め用意しておいた本や英字新聞をじっくりと読み、iPad miniでネット動画やFMラジオを見たり聴いたりしながら、のんびりと移ろう車窓の景色を眺める…そんなスローな旅気分がとても楽しく感じられるのである。

そんなときに座りたいのは、上の写真のような、先頭と最後尾の車両に1つずつしか用意されていない、ふたり掛けのミニボックスシートである。
ローカル線ゆえに車内はいつもガラガラなのに、この席だけはいつも競争率が高い。やはり皆さん、ここがお好みなのだろう。僕は行きには座れず、帰りだけ少しのあいだ座ることが出来た。

上は、車窓から目撃した不思議なオブジェ。山の斜面の森を切り開いて作ったようだ。ラブレターに手を掛けたような形に見える。周囲は特に何かの観光地というわけでもないと思う。唐突にこれだけが見えるのだ。今まで気づかなかった。最近できたものなのだろうか?

さて、今回の長旅の最後、駅からうちまで歩いて帰る途中、あのラフマニ・モフと相棒のねこがいた。今回も、前回見たときと同じく、左右の立ち位置が同じだ。
つまり、決まってモフモフの方が右なのである。僕はきょう生憎と、ねこが喜ぶものは持ち合わせていない。写真だけ撮って、じゃあまた、ということで…。


さてさて、往復の車中で視聴した動画のうち、ふたつをご紹介したいと思う。

ひとつめは、岡田斗司夫氏による映画『スタンド・バイ・ミー』の解説。岡田氏といえば、当ブログの右上にリンクを貼ってある『火垂るの墓』の解説が白眉である。この『スタンド・バイ・ミー』の解説も、それに劣らず素晴らしい。
映画撮影の文法と文学的な視点を駆使して読み解いていく様は実に爽快。特に、カズオ・イシグロの小説のような切り口(時間の流れと記憶や思い出との相関や、それが物語の流れに与える影響など)になっているのが実に興味深い。

下の動画は、わずか25分ほどのレクチャーだけれども、かなり貴重だと思う。必見ですよ…。右側の『火垂るの墓』の解説動画も、未見の方は是非。

あと、もうひとつは、ドラクエ3の演奏を3つのオーケストラで聴き比べ、というもの。

すぎやまこういち先生は、8〜9年おきに、N響→ロンドン・フィル→東京都響と、ご自身のタクトでドラクエ3の音楽を録り直してきた。
この動画で聴き比べると、それぞれのオケの個性のみならず、すぎやま先生がこの音楽で何を聴かせようとしてこられたのか、ということが浮き彫りになってくるようで面白いのである。

いずれも三者三様に素晴らしい演奏だ。どれががいちばん好きなのかは、人それぞれだと思うけれども、僕はやはり都響が今は最もしっくり来る感じがするのだった…。

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