昨年の新型コロナ感染と治癒後、筋トレを開始。身についた筋肉を活用(?)すべく僕が新たに始めたのは、これなのだ…

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僕は昨夏に新型コロナに罹ったということがあった。数日間は発熱のために寝込み、それ以降も味覚異常や嗅覚異常のために食事が殆ど取れなかった。2週間近くは十分な栄養が摂取出来なかったと記憶している。

するとどうであろう、体重は1割程が落ち、体脂肪率は一桁近くまでに落ち込んだのであった(その後、9.5%になったこともある)。鏡の前でガリガリに痩せ細った自らの身体を見て衝撃を受けると同時に、何かをしなければ!という思いに駆られた。
そこで、体調が回復しつつある頃合を見計らって、毎朝の筋肉トレーニングを開始することにしたのである。例えば、腕立て伏せ、上体起こし(腹筋)といった具合である。現在は他に、懸垂およびペットボトルを利用したダンベル運動も加えている。

するとどうであろう。筋トレを始めてから1ヶ月も経つと、自分の体つきに変化が見られたのであった。ほぼ骨と皮だけであった上半身が、見るからに筋肉質になってきたのである。トレーニング後に必ず飲んでいるプロテインのお陰も多分にあろうかと思う。
「筋肉は嘘をつかない」という言葉があるようだけれども本当だと思った。やればやっただけ結果として如実に現れるのだ。そんなことを半年くらい続けて、更にムキムキとなった筋肉をさて何に役立てようか?と僕は思案し始めた。今年の2月のことである。

そこで、武道を始めてみようと考えついた。僕は柔道と弓道の経験が幾許かあるので、それらとは別のものが良いと思った。例を挙げるならば、合気道、空手道、テコンドーなどなど。ネットを活用して情報を集めてみた。今は実に便利な時代となったものだ…。
すると、割と近所に空手の道場や教室が3つあることが分かったのだ。ひとつは所謂フルコンタクト系で、週2回の練習で月謝が1万円くらいと高額であった。ふたつ目は流派がよく分からない道場だけれども、子供たちが楽しく熱心にやっている写真が見られた。

最後は、公民館でやっている空手教室で、子供から大人まで歓迎といった旨が記されていた。松濤館流という伝統流派の空手道であるとも書いてある。月謝については明記されていなかったけれども、公共の施設を利用しているので安いのかも、と僕は期待した。
そのページを更に閲覧してみると、電話番号の他に、この空手教室の師範のメールアドレスを見つけることが出来た。直接電話しても良いのだけれども、いざとなったらメールの方が断りやすいだろうという読みもあったのだ。早速、見学希望のメールを出してみた。

返事はすぐに来た。「見学はもちろん可能ですが、体験入会をしてみませんか。歓迎いたします」といったことが書かれていたのだ。気を良くした僕は、数日後の練習日に公民館へと赴いたのである。教室の開始時刻より15分くらい早く着いてしまった。
館内の廊下で10分ほど待つと、空手衣に真っ白なジャンパーを着込んだ細身の壮年男性が向こうからやって来た。素足には雪駄のような草履を履いて、摺り足気味に歩いている。如何にも武道家という雰囲気であった。しかし威圧感のようなものはない。


(うまい棒は空手教室の後、小学生から貰いましたw)

僕は近づいて行って話しかけた。名を名乗り、先日メールした者であることを告げたのだ。すると、その男性はパッと明るく表情を変えて、「ようこそいらっしゃいました。ご本人が希望されているのですか?どうぞこちらへ」とホールへと案内してくれた。
僕はこの場所に入るのは初めてである。明かりを点けた公民館のホールは閑散として広かった。折りたたんだ幾つものテーブルが壁際に寄せてあった。片隅にはアップライトピアノが黒い布のカバーを掛けて佇んでいる。学校の体育館のようなステージもあった。

男性は自分がこの空手教室の師範であると自己紹介した。更に何枚かの資料を示しながら、文部科学省が所轄する空手道の正式な団体に加盟した教室であることを説明した。有り体に言えば、「怪しい空手教室ではありません」ということなのだと僕は理解した。
「もし宜しければ見るだけではなくて、練習にも参加してみませんか」と師範が仰るので、僕はふたつ返事で即答した。その間も、「お願いします!」と快活な声を上げて挨拶する小学生が続々とやって来る。やがて開始時刻となった。僕は靴下を脱いだ。

整列!の掛け声と共に、全員がホールの中央付近に横一列で並ぶ。見ると男女は半々くらい、15名ほどいる生徒たちはほぼ全員が小学生らしい。あとは中学生と思しき背丈の男子が2名ほど。大人は僕ひとりのようだった。でも何故か居心地が悪い気はしない。
師範に促され、自己紹介のために全員の前に立った。僕は苗字を言い、職業は塾で英語を教えることであると述べた。それを受けて師範は、「英語が出来るって凄いですねー。先生(師範のこと)も英語が出来るようになりたかったんです」と皆へ朗らかに言った。

そして、「久し振りに一般の人(大人のこと)が練習に来てくれました。先生は嬉しいです。みんなも是非よろしく」と歓迎の意を述べてくれたのである。それから、一連の準備体操および突きや蹴りなど基本動作の練習へと入った。僕も列に戻り、一緒にやった。
空手道には形(かた)という、基本動作をコンビネーション化したものが幾つも定められている。語学で例えるならば、各種の突き、蹴り、受け(防御のこと)が単語に相当するならば、形は文法や例文といったところだろうか。そんな気がしたのである。

一斉に形の練習をする際には、僕は先生に呼ばれてステージに腰掛け、ふたりで全員の演武を眺めた。まだ何も知らない僕には形の練習までは無理だからなのだろう。松濤館流の「平安」形が5種類、あと「鉄騎」形が1種類、それらが次々と披露された。
殆ど一糸乱れぬと感じられる程の動きを見渡しながら、先生は其々の形の持つ意義や役割などを説明した。僕はただ感心するほかなかった。皆んな実に熱心で上手だったからである。特に、黒帯や茶帯の子ども達がキビキビとしていて動きが実に格好良い。

その後の自由練習なども含めて、約2時間の空手教室はあっという間に終わった。この日、僕は平安形のひとつ目である「平安初段」を少し教わることが出来た。左右別々の動きや回転動作など、まだ分からないことが多かったけれども楽しく学ぶことが出来た。
ホールを後にする際、先生が「今月と来月は体験ということで無料にいたします。また来てくださいね」と仰って下さった。僕は思わず「はい。またお邪魔させて頂きますので宜しくお願いします!」と答えたのである。帰り道の夜風が心地好かった。

それから早いもので、2ヶ月が経過し、今月から正式入会となったのである。練習日は最大で週に5日。月謝は3000円だ。僕は塾の仕事の関係上、週に2日しか行くことが出来ないけれども、素晴らしくコストパフォーマンスが良いと思っている。
先生からは「筋が良いですね」とか「覚えが早いです」とか、挙句には「本当に空手は初めてなんですか?」とか身に余る賛辞を頂きながら練習に励んでいる。教室に行くことが出来ない日には、うちでも基本動作や形の練習を行っている。

そして、トップの写真は、4月1日に頂いた、この空手教室の帯である。僕は初心者なので白帯だ。先生からは「昇級審査では、次の黄色帯を飛ばして、その上の緑帯に挑戦してみましょう」と言われている。つまり飛び級である。これは嬉しいことだと思った。
ただし、黄色帯に上がるときに必要な形である「平安初段」と緑帯になるために必要な「平安二段」というふたつの形を同時にマスターしなくてはならない。その分だけ大変ではあるけれども、やり甲斐があるというものだろう。

あと、トップの写真で一緒に写っているキーホルダーは、松濤館流のロゴマーク。これは同じマークが帯のタグの中にも刺繍されている。虎の形をあしらったようである。空手道は沖縄に源流があるので、南国を感じさせるもの、ということなのだろうと思う。
このキーホルダーはネットで購入した際、元々ネックレスだったのだけれども、自分でチェーンを外して代わりにリングを通した。先生にお見せしたところ、「これ、私も欲しいですねー」と仰っていた。再度入手の機会があれば是非プレゼントしたいと思っている。


(松濤館流の平安二段を360度で撮影した解説動画でお楽しみ下さい…)

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空手道には、基本動作の練習だけでなく、形を覚えるのもまた必要であるということは上に書いた通りですが、ではどうやって覚えたら良いのでしょうか?形は普通の速度で演武した場合、ひとつにつき1〜2分くらいの長さがあります。
例えば戦前の頃でしたら、師範の演武をひたすら観察して覚え、自分でもやってみて、間違っているところは師範に指摘して貰って修正し…といったようなことを繰り返して習得していったようです。現在は、そのような方法だけでなく、書籍に載っている写真やビデオおよびDVD、ネット動画などを用いることも出来ます。つまり、資料の種類が増えたので便利になったとも言うことが出来るのです。
しかし、実際には同じ「松濤館流」を謳った書籍や動画を見ても、演武者によって細部が微妙に異なっていることがあるのです。手や腕の角度、踏み込んだ足の位置やかたち等、幾つも見ていると、さてどれがいちばん良いのだろう?と考え込みたくなってきます。
そんなとき、僕の師範から一冊の書籍をお借りすることが出来ました。それが、下のリンクの本「教範全集」です。これは謂わば、松濤館流の公式な形ガイドブックなのです。普段の空手教室でも先生はこの本の記述に基づいて形の指導を行なっていると仰っていました。つまり、僕はこの本に載っている写真や説明に従って自主練習をしていれば間違いない、というわけなのです。
更に僕は、この本に準拠したDVD(全2巻)も購入しました。このDVDでは、演武者が教範全集と同じ人だったので、併用して練習すればもっと分かりやすく、うちでの稽古もなお一層捗ります。こうして、うちで形の練習をする→空手教室で先生に修正点を指摘してもらい直す→それに基づいてまた自主練習をする、といったかたちでスパイラルアップすることが出来ます。形をふたつ演武しなければならない来るべき昇級審査も、きっと恐れることはないでしょう。

『書籍 松涛館流空手道形教範全集「基本形」』
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