郷ひろみと、坂本龍一と、ラフマニノフと。

音楽

先達てネットオークションで買った、LPレコード2枚。
ひとつは、1983年の郷ひろみのアルバム『比呂魅卿の犯罪』。万葉仮名のような、なかなか凄いタイトルであるw

何故、今どき郷ひろみのレコードを買うのか、というと、これは坂本龍一のプロデュース作だからなのだ。 当時は、坂本龍一もYMOも、テクノ歌謡路線を直走っていた時期で、例えば、細野晴臣はイモ欽トリオの「ハイスクール・ララバイ」を作編曲した、というのは有名な話。あと、「君に胸キュン。」も、この時期のYMOの歌謡曲的代表作のひとつだ。
そして、坂本龍一はこの時期、郷ひろみや前川清などのアルバムをプロデュースしていたのである。 僕は、あくまでもYMOや坂本龍一自身の作品のファンなので、そういった周辺の作品は、実はこれ迄あまり聴かずにきていた。

ところが、数年前ついに、この郷ひろみの『比呂魅卿の犯罪』がCD化された。そのときには、これは隠れた名盤だとか、いや迷盤だとか、一部で評判になっていたようである。それで、遅ればせながら、僕も最近そのことを仄聞し、取り敢えず図書館でCDを借りて聴いてみたのである。
しかし、CD化の際に行ったマスタリングが、このアルバムのサウンドに似つかわしくないように、僕には感じられた。何かキンキンして、やや耳ざわりなのである。
以前の投稿にも書いたことがあるけれども、同じ作品でも、CDとLPとでは、マスタリング作業を別に行うのが普通のようだ。それぞれの周波数特性等が異なるからである。どうも、この『比呂魅卿の犯罪』の場合には、CD化の際のマスタリングが、結果としてはあまり上手くいかなかったのではないか…。そこで、オリジナルであるLPの方を買って聴いてみることにした、という訳なのだ。

やはり、それで正解だったと思う。LPでは、CDのときのようなドギツイ音ではなく、この当時の坂本龍一らしい、キラキラとしながらもホンワリとしたようなサウンドを聴かせてくれている。例えるならば、同じ時期に制作された、坂本龍一のソロアルバム『音楽図鑑』のような音だ。どうも、『比呂魅卿の犯罪』のレコード会社か、CDのマスタリングエンジニアの方々は、そのあたりの坂本龍一作品のサウンド研究が不足していたのかも知れない、と思う。

ところで、このアルバムの作詞作曲陣は、坂本龍一の他には、中島みゆき、忌野清志郎(!)、矢野顕子、糸井重里など、かなり個性的な面々が揃っている。そして、特に、それぞれの作曲者の手によるメロディのセンスが、実にバラエティ豊かで、聴いていて楽しい。 これだけの楽曲をひとつひとつ余すところなく、キッチリと編曲し切った坂本龍一の手腕も素晴らしい。
加えて、僕にとっては、この時代の坂本龍一独特のシンセサウンドを聴くことが出来る、ということが嬉しいのだ。上述の『音楽図鑑』の中で聴かれるものと同じような音色やフレーズが幾つか聴こえてくる、という、ちょっとした、音の宝探しなのである。

80年代の坂本龍一の、隠れた名盤『比呂魅卿の犯罪』。僕にとっては、手放せないレコードのひとつになった。

もうひとつは、ラフマニノフの『交響曲第2番』。指揮は、サー・エイドリアン・ボールト、演奏は、ロンドン・フィルハーモニックである。米国の輸入盤。
一見してクラシックのレコードとは思えないようなジャケットのデザインが、何とも可愛らしい。このまま壁に掛けて飾っておきたいくらいだ。

この交響曲の演奏は、数ある中でも、RCA盤のボールトに勝るものはない、というのを何処かで読んで、探し出した。60年くらい前の演奏でモノラルなのだけれども、未だCDになっておらず、割とレアらしい。
このレコードに収められているのは、特に第3楽章がゆっくり目の、良い意味でやや時代がかった演奏である。休日にくつろぎながら聴くのにピッタリだろう、と思う。盤面のコンディションも良い。実に貴重な、良いものを入手できたと思っている。

ボールトは、同時代の例えばフルトヴェングラーなどと比べて、CD化されている作品が、何故か余り多くはない。これから時代が下っていっても、きっとそうなのであろう。そういった意味でも、このLPは大切に保管し、永く愛聴していこうと考えている。

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昨日の投稿に書いた、カプースチンのピアノ曲だけれども、このCDに収録されているらしい。図書館にはない…。買うかなあ。

カプースチン『ピアノソナタ第2番&第3番』
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