先日、NHK-FMで、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番を聴いた。それだけならばどうと言うことはないのだけれども、その演奏は、指揮がショスタコーヴィチの息子で、ピアノ独奏が孫だったのである。世にも珍しい、親子三代による作品だったというわけだ。
この曲は元々、ショスタコーヴィチがピアニストである息子に献呈するために書いた曲だったのだそうである。それが今度は、息子が指揮者となり、更にその息子(つまり孫)がピアノを弾く。その家内制手工業的な演奏スタイル(?)が何ともユニークだと感じた。
しかし、それが面白かっただけではないのだ。演奏そのものの出来も、かなり良かったのだった。
ガーシュウィンのピアコンを彷彿とさせる、リズミカルでアグレッシブな第1楽章と第3楽章、それからラフマニノフの緩徐楽章のようなメランコリックでメロディアスな第2楽章。
合わせて20分弱の時間があっという間だった。十分に堪能させて頂きましたw 嗚呼、FMの受信状態を改善しておいて良かったなあ…。
さて、この演奏が収録されたCDはシャンドスというレーベルのものなので、つまりは輸入盤。従って、図書館などにはまず置いていないだろう。また英国あたりから取り寄せて買うかなあ…。それまでは取り敢えず、YouTubeで聴いておこうと思った。
…と考えていたら、Amazonに中古の出物があったので、そちらを注文した。それがきょう届いたのである。それが、トップの写真。
その前に、バーンスタインが弾き振りをした別のCDも図書館で借りて聴いてみたけれども、僕にはやはりこちらの方が断然良い。親子三代共演作である血統の影響か、演奏の迫力が真に迫ってくる気がするのだ。
(それにしても、ジャケットの横顔が3人ともほぼ一緒だなあ。やはり血は争えないのかも…)
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さて、今年は何やらベートーヴェンイヤーだからという訳ではないのだけれども、僕は以前から交響曲第7番を聴くようになったのをきっかけに、いまその曲のスコアリーディングの方も進めている(…といっても、譜面を眺めているだけだけれどもw)。
この楽聖と言われた作曲家の一体何がどう素晴らしいのか、それが今年のうちに発見できれば良いと思っている。
いやあ、でも本当によく分からないんです…ベートーヴェンの(特にそのオーケストレーションの)凄味というものが…。良いメロディだなあ、というのは時折感じるのだけれども。
そして、天才鬼才指揮者、テオドール・クルレンツィスの今年の来日公演について、料金等の内容が先日発表された。いずれも、やはりベートーヴェンプログラムである。僕の目当ては交響曲第7番の日だ。この日は、コパチンスカヤ演奏のヴァイオリン協奏曲もある。
金額は、昨年のチャイコフスキーがメインだったプログラムのときよりも取り分け高額になったわけではないと思う。若干上がったかな、という程度だ。S席は流石に手が届かないにしても、他の席ならば、まあ何とかなりそうな感じだなw
京都公演のチケットは、既に発売になったらしい。東京の分も近日だろうか?さて…。
ところで、僕のベートーヴェンの7番のスコアは、ブラームスの4番のミニスコアよりも少し版の大きいものだ。(下の写真をご参照)
楽譜の印刷もそちらよりも鮮明であるように感じる。紙がより白っぽいことも手伝っているのだろう。今度から何かスコアを買うときには、こちらの出版社のものにしようかな…。
それから、このスコアは「作曲家にとって最大の夢が交響曲を書くことに定まったのは、ほぼベートーヴェンからだったと推定できる」という一文から始まる解説も秀逸だ。
解説の筆者は、TVなどでお馴染みの作曲家、青島広志氏である。いやあ、この人は分かりやすくて良い文章を書く人だなあ…と思ったのだった。
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そして、きょう。漸く『男はつらいよ お帰り 寅さん』を観ることを得た。お正月の頃から観に行こうと思っていて、やっとのことで時間が取れたのだ。これは、実に良い作品だった。繰り返し何度でも観て、あの世界と雰囲気の中にずっと浸っていたくなるような…。
寅さんでは半ばお約束の、夢オチになるアヴァンタイトルだけれども、今作では甥の満男のそれである。そして、忘れ得ぬイントロと桑田佳祐が歌うテーマソングへと続く。
お馴染みの江戸川の風景と桑田佳祐が上手くコラージュされ、歌の後には寅さんの姿へと引き継がれていく。この辺りの編集の妙味に、思わず唸ってしまう。ものの数分でもう、映画の中へと引き込まれてしまった。
物語は、小説家となった満男の回想と邂逅を中心に進んでいく。適宜、過去の作品の名場面や名台詞がインサートされ、一種ベスト版的な流れも持ちつつ、再会や老いをテーマにしたストーリーもまた進行する、という具合である。
過去作のシーンが少々唐突に本編へと入り込んで来ることが多いのだけれども、しかし何故か不自然な感じがしないのである。その映像にはフィルムグレインやノイズが殆ど見られず、音声もまた余り古く聞こえない。実に綺麗にリマスターしてあるのだなと感心させられた。
そういったレストアや、話の流れを決して断ち切らない編集そのものの巧みさもまた、本作にはあるのだろうと感じたのである。謂わば、クロノスとカイロスで言うところの、カイロス的な視点の構成だろうと思われた。
何はともあれ、懐かしさと人情と切なさと。それらが一切ない交ぜになった、月並みに言えば、今回も笑いあり涙ありの秀作である。寅さんファンは決して見逃すわけにいかない一作だろうと思う。
僕は『男はつらいよ』シリーズを主にTVやDVDで観てきた。スクリーンで寅さんの顔を観るのは初めてかも知れない。これがまた、実に良いのである。何というべきか、あの「四角い笑顔」を大きな画面で目の当たりにして、僕は心より安堵したのだった…。
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