トップの写真は、今月初め頃に撮った上弦の月。半月である。いかにも秋の空といった風の、シーイングの良い夜空であった。
そのために、月面の写りも非常にクリア。クレータの窪みのみならず、岩の山脈の影までもが見て取れる。ひょっとすると、今年いちばんの会心の作となった一枚かも知れない、と思う。
さて、ここで連絡事項をば。前回の投稿の最後に書き置いておこうかと考えつつ書きそびれてしまったので…。僕の旧友のOさん宛である。先週、手紙をしたためて郵送したのだ。どうぞお楽しみに、と伝えておきたかったのだった。
しかし、もうそろそろお手元に届いているかも知れない。だいぶ距離が離れているけれども、流石に何日も経ったので…。今回の手紙では、ブログになかなか書けないようなパーソナルなことを多く記した。あとスペシャルな付録つきである。Oさん、お楽しみ下さいね!
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さて、僕は大学で英文学を専攻したのだけれども、主にアメリカ文学を好んだ。その中でも特に、詩に傾倒した。恩師が英詩人(英語の詩人)だったので、まあ単純に惹かれただけなのかも知れない。僕は当時、自分で英詩を書いたり、日本語の詩を英訳したりもした。
好きな英詩人は何人かいるけれども、最近また思い出して本を引っ張り出して鑑賞しているのは、ハリール・ジブラーン(1833-1931)である。米国では有名な人で、尚且つ日本でも翻訳書が出版されているので、既にご存知の方もおられるかも知れない。
ジブラーンは、レバノン生まれの詩人、芸術家で、米国に長く居住していた。他には、パリに渡ってロダンの弟子となった頃もあるそうなのである。詩作だけでなく、自著の挿絵などで画才も発揮したのだ。
レバノンではカトリック系の基督教徒として育ったので、ジブラーンの詩にはその影響が色濃く出ているようにも僕には感じられる。ただし、ストレートな基督教的宗教観ではなく、それがジブラーン流にややズレているのである。僕にはそれがまた良いのだ。
作風は至って思索的、哲学的で、ジブラーンのことをpoet(詩人)やartist(画家、芸術家)だけでなく、philosopher(哲学者、哲人)であるとプロフィールに載せている米国の書籍もあるくらいだ。
今回は、そんな孤高の詩人、ハリール・ジブラーンをご紹介したいと思う。どうぞ、お付き合い下さいませ…。
僕は今週になってから、画像検索でジブラーンの詩やエッセイの文言が載った画像を見つけては、細長くトリミングしている。これを後でプリントアウトしラミネートパウチして、本の栞として利用してみようというわけなのだ。
よって、以下幾つかご紹介するジブラーンの言葉の画像は、少し細く横長または縦長になっているけれども、そういった事情があるというわけなのである。ちなみに、上手く栞が出来上がったら、次回の投稿に載せたいと思うので、どうぞお楽しみに…。
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愛はそれ自身の深さを知らない
我々もそのことを絶えず知らないまま
別離の時が訪れるまで (拙訳)
ちなみに、上の画像中の写真は、若きジブラーンのポートレイト。ポーズも決まっているし、なかなかのイケメンなのでは⁉︎
あと、「時」という意味でtimeではなくhourを用いるのは所謂、文語である。彼此100年以上も昔に生きた人なので、作品のここかしこに今では旧いと思われるような言葉遣いが見られるのだ。それもまた味わい深いと感じる。
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忘れてはいけない…
地球があなたの素足を喜んで感じている
風があなたの髪と遊びたがっている (拙訳)
ジブラーンには、「Earth(地球よ)」という、地球に呼びかける内容の詩があります。上の言葉には、何かそれを彷彿とさせるものがありますね…。
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ある日、君は僕に訊くだろう
「どちらが大切なの?
私の人生?それともあなたの人生?」
僕はこう答える。「僕の人生だ」
すると、君は僕のもとを去って行くだろう
「君こそが僕の人生」と知らないままに (拙訳)
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ご紹介したいジブラーンの言葉は他にもまだまだ幾つもあるのだけれども、今回はこのくらいで…。
あと、下の動画は、ジブラーンの代表作である詩集『The Prophet(預言者)』から「On Children(子供について)」という作品を朗読したもの。この詩集にはジブラーンの哲学的な側面が横溢していると思うのだ。
まお、動画は生憎と英語原文のみなので、和訳をご覧になりたい方は、例えばこちらのサイトなどをご参照あれ。
ちなみに、この『預言者』という詩集は、数年前に米国でアニメ映画化されている。
先達て、僕もDVDを買って鑑賞してみたけれども、『ライオンキング』の監督やスタッフが手掛けただけあって、実に丁寧な作りだと感じた。世界に遍くいるであろうジブラーンのファンは皆、納得の出来栄えなのでは、と思う。下の動画は、その予告編。
(それぞれの詩の朗読シーンが、とにかく芸術的なのです…)
…とまあ、今回はこんな風にして、僕の好きな英詩人、ハリール・ジブラーンをご紹介してみた。今後も機会があれば是非ともジブラーンについて触れていきたいと思っている…。
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ジブラーンを紹介した本や『預言者』の日本語訳は、数はあまり多くはありませんが現在も幾つかが発売されています。その中でも特に、医師で作家の神谷美恵子さんが書いた下のリンクの本が有名です。この本(正確に言うと、この本の元本)が出来たのは、レバノン大統領から『The Prophet』を贈られた美智子妃殿下(当時)が神谷さんにその本を紹介したことがきっかけなのだそうです。良書というのは、そのようにして輪が広がっていくものなのですね…。
神谷美恵子 著『ハリール・ジブラーンの詩 (角川文庫)』
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