シンセサイザーの巨匠、冨田勲氏お手製の音楽データをPCで開いてみたのだ…

動画

先達て、ある動画を観た。ニコニコ動画である。

そこから流れてきたのは、タルコフスキーの映画『惑星ソラリス』をモチーフに、シンセサイザーの巨匠である冨田勲氏が制作したという音楽だった。
原曲はバッハ。それを冨田氏がシンセサイザーで演奏したものなのである。更に、その動画には『惑星ソラリス』の様々な場面が映像として付されていた。とてもよく出来た動画だったと思う。


(ニコニコ動画「冨田勲 ソラリスの海」)

僕は、これを観て、きっとサラウンドにもこの音楽が合うのではないかと考えた。冨田氏は嘗て、立体音響に対応したレコードを出していたことがあったのだ。
このバッハを基にしたシンセサイザーの音楽も、ドルビープロロジックを通せば、サラウンドの立体音響で際立って聞こえるだろうと思ったのである。

それから早速、図書館でCDを借りてきた。彼此20年以上前に発売された『バッハ・ファンタジー』というアルバムに、その曲は収録されていた。
実際に聞いてみると、その曲に限らずいずれの曲も、文字通りファンタジックで且つサラウンドの音響にも実によくマッチしていた。良いアルバムだと思った。

添付のライナーノーツを読むと、アルバムの最後の曲である「トッカータとフーガ ニ短調」については、制作時のデータをCD-ROMとして収録した、といったことが書いているのに気づいた。
ちなみに、この曲はヤマハのQY22という小型シーケンサ(自動演奏用コンピュータ)たった1台だけを用いて作ったのだそうである。CDを聴くと、まさかそんな小さな装置で作って再生したとは思えないような、素晴らしい演奏だったのだけれども…。


(出典:YAMAHA 製品情報 「QY22」

後日、そのCD-ROMトラックから「トッカータとフーガ ニ短調」のデータを取り出して開いてみた。僕のノートPCにインストールしてある音楽制作ソフトで、そのデータを表示させた。
殆ど全ての音符は、ジャストのタイミングや長さで切り揃えられて打ち込まれていた。あの複雑で幾何学的なバッハの音符の山を、きっと冨田氏は一音一音、手入力したのだろう。かなりの労力が必要だったのでは、と感じられたのである。

さて、凄いのは、ここからだ。更にデータを見ていくと、音量とテンポのコントロール信号が大量に入っていたのが分かった。トップの写真で見られる山型のグラフは、音量コントロールのそれ(ほんの一部)である。
テンポは、多いときには一拍ごとにチェンジさせていた。例えば、イントロでBPM =60だったものが、その後10〜20と下がって行き、更には何と200まで上がる箇所もある。

こうして、如何にも人間が弾いているかのようなリアリティを出しているのだ。逆に言えば、実際の名演奏家たちはそこまでダイナミックに変化させながら弾いているというわけなのだろう。
僕も、コンピュータに自分で音楽データを打ち込んで作るときには、音量やテンポの値には気を使う。でも、例えばテンポの落差はまあ、精々半分以内といったところだろうか。それ以上の変化は、ちょっと怖くて気が咎めるのであるw

しかし、冨田勲氏のような世界的な巨匠は、ときにはこうして10倍以上もの値の変化をつけて作っていたのだ。これには恐れ入った。いやあ、流石である。大変に勉強になった…。

さてさて、冨田氏はライナーノーツに、このデータを使って自由に遊んでいただけたら幸い、と書き残されている。一例として、大オーケストラに編曲するもよし、とも。例えば、冨田氏が影響されたという、ストコフスキーのような管弦楽アレンジも面白いだろう、と思う。
もしくは、うちにあるシンセサイザーやサンプラーを使って鳴らしてみるだけでも、これは十分に楽しめるのかも知れない。そう考えると、宝物のようなデータなのだ…。

是非とも、このデータを使って「遊んで」みようと思う。長くて複雑な曲なのでデータには直接手を加えずに、ただシンセサイザーの音色を次々に切り替えていくだけでも、きっと楽しく聴けるだろう。その内に、挑戦してみるつもりだ…。

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バッハといえば、何やら堅苦しくて難しいというイメージが一般的にはあるのかも知れません。でも、この冨田勲氏のアルバムでは、中でもポップな曲調の楽曲が多く選ばれています。それらがシンセサイザーによって料理されることにより、とても色彩豊かで煌びやかな音楽へと変貌しました。バッハに対するイメージがちょっと変わるかも、という点でもオススメです…。

冨田勲『バッハ・ファンタジー』
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