カラヤンとワイセンベルクの、ラフマニノフピアノ協奏曲(1)

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先達て、何回かに分けてご紹介をした、『1984年の歌謡曲』という本には、魅力的で特徴的な表現が溢れている。
例えば、以前書いた「パイプオルガンのように澄んだ高音」。これは、薬師丸ひろ子の歌声のことである。他には、玉置浩二の歌声を、「湿ったタオルのような低音と、乾いたゴムのような高音」と形容する等等である。なかなかユニークな表現だ。
そして、この本の中で、最高ランクの褒め言葉としてよく使われているのが、「変態的」という表現である。何も、いやらしいとか、そういう意味ではない。他の誰もやらないような、際立って個性的で秀れた、といった具合に、格別に評価しているときに用いられる言葉である。

さて、昨日までに僕は、ピアニストのヴァレンティーナ・リシッツァについて、3回に渡って書いてきた。その中で、「ラフマニノフのピアノ協奏曲に関して、男性ピアニストの演奏で出色のものがある」と書いたことがあった。

アレクシス・ワイセンベルクという、ブルガリア生まれのピアニストである。1929年生まれで、2012年に亡くなっている。このワイセンベルクが、カラヤンの指揮でベルリンフィルと共に演奏した、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が、「変態的」に素晴らしいのである。

この、ワイセンベルク・カラヤン・ベルリンフィルによる、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、CDとDVDがリリースされている。僕はいずれも、図書館で借りて視聴した。(上の写真は、DVD版のもの)
その何れもが、YouTubeでも視聴することが出来る。ただ、DVD版の方は、YouTubeだと映像も音声もかなりレートを落とされてしまって、劣化したものしか観ることが出来ない。その点を、ご了承のほど…。

CD版の演奏は、こちら。録音は、1972年である。映像は、ラフマニノフやワイセンベルク、カラヤンの写真。

DVD版は、こちら。1973年の収録。音質も画質も、YouTubeではあまり良くないけれども、実際のDVDでは、もっと綺麗で見応えがあるということは付記しておきたい…。

CD版、DVD版、何れの演奏でも、カラヤンの非常に計算された、実に抑揚のあるオケを聴くことが出来る。リシッツァのCDのオケの演奏と比べると、これはラフマニノフというよりは、むしろチャイコフスキーあたりのオケ曲に近いような気がするくらいだw
1970年代と言えば、今ほどにはラフマニノフの楽曲が盛んに演奏されていなかったのであろう、と思う。
例えば、丁度この時代頃から活躍していた、クラシックの音楽評論家である志鳥栄八郎氏のレコードガイドを見ても、ラフマニノフはせいぜい1曲しか紹介されていなかったことが多い、と記憶している。
映画『逢びき』で、このピアノ協奏曲の第2番が使われたということ以外は、ラフマニノフの楽曲は、まだまだちょっとマイナーだったのだろう。当時はリファレンスとなる演奏が余りなかったのだと思う。

つまり、そこでラフマニノフを振る際の(譜読みや楽曲解釈などの)下敷きのひとつに、1970年代当時はチャイコフスキーのようなロシア様式のロマン派が用いられたのではないか。そんな気がしてくるのである。まあ、これは穿った見方だろうけれども…w

しかし、今から観れば、そのように時代がかっているとは言え、このラフマニノフは、カラヤンの名演のひとつとして数えられると、僕は思う。リシッツァのCDの、颯爽としたスタイリッシュなオケも好きだけれども、70年代風のオケのラフマニノフも、実に良いものである。

このDVDでは、カラヤンの作品らしく、マエストロご自身の凛々しいお姿を観ることが出来る。こういった演出も、カラヤンのDVDを観る醍醐味のひとつだ。

…とまあ、ワイセンベルクについて書くつもりが、その前に紙幅が尽きてしまったw 続きは、明日に持ち越しと致しまする…。では。(つづく

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ワイセンベルクは、どちらかと言えば、日本では知名度の余りないピアニストかと思いますが、かなりの技巧家で、美しい演奏を聴かせてくれる名人のひとりだと思います。

『ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 R・シュトラウス 交響詩 ドンキホーテ 』(DVD)
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