桜が舞い散る週末に、ある芥川賞作家の講演を聞きに行ってきたのだ…

お出かけ

週末は、すっかりと桜吹雪となった。うちの近所の並木道にも、足元には無数の花弁が散らばっている。車道では、車が走行するたびに、まるで薄桃色の波飛沫が起きるかの如く、花のひとひらひとひらが舞い上げられるのである。

そんな日のお昼頃、僕は遥々出掛けて行った。高橋弘希さんという、昨年の芥川賞を受賞した作家の講演を聞くためだった。会場は、高橋さんの出身大学。学長との対談形式である。

僕は普段、小説は殆ど全く読まないので、高橋弘希さんの作品についても余りよく知らない。ただ、芥川賞受賞時のニュース映像や記事に付された写真などを見て、印象に残っていたのである。
上の写真の右側が高橋弘希さんである。何というか、やはり一度見たら忘れられないだろうと思う。こう書いたらファンの方に怒られるかも知れないけれども、如何にも掴み所のない茫洋とした雰囲気が芥川賞作家らしからぬ(?)という感じがしていた。

でも、僕はそのような印象を持つことによって、高橋弘希さんに興味や関心を抱いていたのだ。だからこそ、この機会を捉えて、講演を遥々聞きに行ってきた。実際に、とても楽しい講演であった。行って良かったと思う。
特に面白かったのは、高橋さんが幼い頃、とても手の掛かる子だったという話だ。あんまり夜泣きが激しいので、お母さんが高橋さんを診て貰いに連れて行ったと言うのである。

普通はお医者さんだと思うでしょう?と高橋さんは言う。そうではなくて、祈祷師の所に連れて行かれたのだそうだ。ちなみに、高橋弘希さんは青森県のご出身であることが、会場で配布されたプロフィールに書いてあった。
そこで僕はつい、恐山のイタコを想起した。小ぢんまりと座った俯き加減の老婆のような祈祷師だったのだろうか?想像が膨らむ。高橋さんは話を続けた。そこで言われたのは…この子には狐が憑いているってことなんですよ、と。

小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた学長もそれを聞いて、ええーっ狐ですかぁと驚く。そして、そこからが面白い。高橋さんは、普通その狐を取って貰うじゃないですか、でも僕は診て貰っただけで、取って貰っていないんです、と仰るのだw
会場の皆んなが爆笑した。学長もそれに乗っかって更に言う。じゃあ、今でもその狐が憑いていると?すると高橋さんは一言、はいっ。もう、大爆笑だ。高橋さんの独特の雰囲気は、きっと狐が憑いているからなのだ、と皆んながそう感じたのではなかろうか?

この他にも、まだ面白い話があった。将棋が好きなので、朝日新聞から名人戦の観戦の話が来たときにはふたつ返事で快諾をしたということである。但し、その際には名人戦が開催される東京の超高級ホテル、椿山荘に宿泊できることを念押ししておいたことも。
そして、椿山荘では、その建物の内部の複雑さゆえに廊下で道に迷い、目撃者からツイートされてしまったことや、深夜に3000円くらいのハンバーガーをルームサービスで注文して食べたこと。ちなみに、美味しかったそうだw

名人戦を対局室で観戦できたのは10分か15分くらいの間だったけれども、たまたま長考の最中だったので一手も進まなかったことも。それでも観戦記を書かなければならないので、手が進んだことにして原稿を書こうとしたのだそうだ。
すると、朝日新聞の担当記者から、この名人戦はニコニコ動画で生放送されていたので、事実と違うことを書のはやめて下さい、と止められたのだそうだ。実は、その生放送の中で、高橋弘希さんがバッチリと映っていたのだそうだ。

それで、ニコニコのコメント欄には、コイツ誰だ、という書き込みが殺到していたのだそうであるw 名人戦では普通、新聞記者さえも対局室に立ち入ることが出来ないからだ。高橋さんは、観戦記を執筆する作家の立場で入室が許されたのだ。
そんな感じで、対談相手の学長がその朝日新聞を持参したこともあって、名人戦の観戦記のお話が幾分多めになった。講演のタイトルにあるような「創作の日々」についてのお話が薄くなってしまったのは残念だったけれども、楽しいお話を聞くことが出来た。

その後、我々聴衆(250名ほど)から集めた質問に高橋弘希さんが答えるというコーナーも用意された。その際には、何と僕が書いた質問も読まれたのであるw(内容については内緒…)
この質疑応答のコーナーで僕が興味を持ったのは、影響を受けた作家は誰ですか?という質問に対して、高橋さんが、特にいないっすね、と言ったことである。小説はあんま読まないんで、とも。

その代わりに出てきた名前が、藤子不二雄であった。大長編のドラえもんが特に好きで、皆さんも読んで下さいね、と呼び掛けていた。「大長編」とはきっと、映画の原作となったドラえもんのことであろう。僕も、子供の頃から大好きであるw

さてさて、前回の投稿でお知らせしたように、来訪者数がのべ8万人を突破しました。僕が今朝4時過ぎに確認したときにはあと5人という段階でしたので、8万人到達は午前5時頃だったのだろうと思われます(そのとき、僕は仕事中でした)。
7万人突破から50日ちょっとでの達成ですので、このままのペースで行けば、6月の初めに9万人となり、7月中には遂に10万人!ということになろうかと思います。

日々来訪して下さる皆様には、心より感謝を申し上げます。どうも、有難うございます。これからも、当ブログを何卒、宜しくお願い致します…。


(上は、高橋弘希さんの講演会の帰り道に見かけた野良ねこ。高い声でしきりにニャーニャーと鳴いて、人懐っこいねこであった。飼いねこだろうか?と、はじめは思ったけれども、耳にカットした跡があるので、やはり野良なのだろうか…。はて)

……
上の講演会では、高橋弘希さんのデビュー作である『指の骨』の書名がよく出てきたので、取り敢えずこちらを少し読み始めてみました。冒頭から、密林で敵兵と対峙する日本兵の姿が描かれ、読み手は異世界に飛んだような感じがします。読みやすくも濃密な文体。これからも要注目の作家かもしれません…。

高橋弘希 著『指の骨』
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